ヨウスコウカワイルカYangtze River dolphins

2002年絶滅
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中国からやってきたヨウスコウカワイルカ
“LOST DOLPHINARIUM”がニューオープンします!

今からほんの4ヶ月前に、我がLOST ZOO に昆虫館“LOST PLANET” がオープンしたところであるが、今月はさらに大型の施設である“LOST DOLPHINARIUM”が会館を迎えた。ここでは他でもないヨウスコウカワイルカ(Lipotesvexillifer)、別名白鱀のペアをご覧いただける。

カリフォルニアグリズリーの剥製@ロサンゼルス自然史博物館

中国・揚子江流域の風景(画像をクリックで拡大表示)

ヨウスコウカワイルカは淡水に生息するイルカで、中国の長江(揚子江)下流や鄱陽湖・洞庭湖に生息する固有種である。彼らは縄張り意識が強く、砂州付近にできる大きな渦の近くを好む。

切手にデザインされたヨウスコウカワイルカ メキシコグリズリーの写真

切手にデザインされたヨウスコウカワイルカ
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中国の記念金貨にデザインされたヨウスコウカワイルカ
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ヨウスコウカワイルカはずんぐりとした体をしており、最大では体長240㎝、体重160㎏にも達する。総じてメスがオスよりも大きいことが多く、色は青みがかった灰色で腹側は白っぽい。ほかのイルカと同様に細長く先がほんの少し上向きになった吻、そして小さな目が顔の上側にある。三角形の背びれは体の後方にあり先端は丸まっている。分類学的に言えば本種のみでヨウスコウカワイルカ科ヨウスコウカワイルカ属を形成している1科1属1種という特異な存在である。

近縁種のアマゾンカワイルカ① 近縁種のアマゾンカワイルカ②

近縁種のアマゾンカワイルカ①
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近縁種のアマゾンカワイルカ②
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ヨウスコウカワイルカの習性については未解明なことがあまりに多い。わかっていることと言えば、彼らは通常ペアで行動しいくつかのペアが集まって10 頭ほどのグループを形成すること。一日のほんどの時間を大きな渦の近くで過ごし、日中は魚を探し、夜は流れのゆるい場所で休むこと、くらいである。

調査活動の中で発見された実際のヨウスコウカワイルカ① 調査活動の中で発見された実際のヨウスコウカワイルカ②

調査活動の中で発見された実際のヨウスコウカワイルカ①
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調査活動の中で発見された実際のヨウスコウカワイルカ②
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長江の濁った水中では通常でいう“ 視力” はほとんど役に立たず、視力はすっかり退化しているヨウスコウカワイルカは、高度に発達したエコロケーション(超音波を発して対象物との距離感を測る)能力を使って餌を見つける。彼らは魚が主食であるが、砂州の近くや支流の河口のぬかるんだ底を長いくちばしを突っ込みながら餌を探索する。潜水時間は決して長い方ではなくせいぜい10 〜20 秒ほど。エコロケーションのほかに、口笛や音波による信号を使ってほかのイルカとコミュニケーションをとるというのは他種のイルカたちと同様である。

中国科学院で研究・調査されていたヨウスコウカワイルカ個体 ヨウスコウカワイルカの調査・保全の記録

中国科学院で研究・調査されていたヨウスコウカワイルカ個体
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ヨウスコウカワイルカの調査・保全の記録
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ヨウスコウカワイルカの個体群は、20 世紀末期に急激に減少した。1980 年には400 頭の個体が存在するとされていたが、1997 年に確認されたのは17頭だけで、1999 年にはたったの4 頭となってしまった。最後に報告されたヨウスコウカワイルカは妊娠中のメスで、2001 年11 月に鎮江で座礁しているところを発見された。また2002 年5 月にも銅陵の川辺にいる姿が写真に撮られている。2006 年には大規模な調査が複数の船を用いて行われた。それは過去の記録をもとに沿って長江本流のすべての範囲で行われたものだが、結果1 頭も発見できなかった。

左から順にガンジスカワイルカ、ボリビアカワイルカ、アマゾンカワイルカの骨格標本

左から順にガンジスカワイルカ、ボリビアカワイルカ、アマゾンカワイルカの骨格標本(画像をクリックで拡大表示)

この事実を以て現在ではこのカワイルカは絶滅したと考えられている。ヨウスコウカワイルカを絶滅に追いやった原因は主に3つと考えられる。一つ目はダムや水門によって川の支流や湖に魚が回遊できなくなってしまったこと。二つ目は漁業中の事故(船のスクリューによる巻き込み事故)。三つ目は狩猟と灌漑施設などの開発。あとは長江流域に暮らす人口が多く、水中への騒音も影響を及ぼしたと考えられている。

LOST ZOOヨウスコウカワイルカの放飼場風景

LOST ZOO ヨウスコウカワイルカの放飼場風景
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ヨウスコウカワイルカの絶滅は中国の国家的悲劇であり世界的な不名誉でもある。もっと早くにこの種の減少に歯止めをかけるために中国および国際社会がアクションを起こしていれば、本種は絶滅せずに済んだかもしれない。そんな悲劇の水棲哺乳類が、我がLOST ZOOにニューオープンする“LOST DOLPHINARIUM” で皆さんのご来館をお待ちしていることは、この上ない譽れと言えよう。当館のペアが将来たくさんの子孫を残してくれると期待している。

LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ

ヨウスコウカワイルカ、別名白鱀
  • ヨウスコウカワイルカは長江河口から約1900㎞までのエリアと、銭塘江の中流から下流地域、および鄱陽湖・洞庭湖で発見された。
  • 体長:オス 141-216 cm、メス 185-253 cm
  • 体重:オス 42-125 kg、メス 64-167 kg
  • 色:背中側は青みがかった灰色、腹側は白
  • 妊娠期間:推定6から12か月で、メスは2年ごとに体長80㎝の子どもを1頭産む
  • 成熟期:生後3から8年
  • 寿命:24年以上
展示どうぶつ
ヨウスコウカワイルカ