メガネウSpectacled cormorant

1850年絶滅
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世界を代表する珍鳥、メガネウ

LOST ZOOは、メガネウ(Phalacrocorax perspicillatus)を飼育展示した6番目の施設となる栄誉を感じている。メガネウは体重6kgもあり、飛ぶことのできないガラパゴスコバネウとその他のウの仲間を含めた現存する全てのウ科のどうぶつの中においても最大種であった。アンバランスな100cmの翼幅を持つ、現存種最大のガラパゴスコバネウでさえ5kgであるから、メガネウがいかに大きいかということは推して知るべしだ。逆に、現存する最小種のウは東南ヨーロッパから西海岸まで生息しているコビトウだが、そのからだが45cmの体長と320gの体重であることを考えてみても、やはりメガネウはかなりの大きさであることが判る。

メガネウの剥製 ノヴォシビルスク動物園で飼育されているライオン

メガネウの剥製
ナチュラリス生物多様性センター所蔵
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カムチャッカの海岸線
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メガネウは主にベーリング島やコマンドルスキー諸島、またはロシアの極北東のカムチャッカ海岸などに生息していた。この種については博物学者のゲオルグ・シュテラーが1741年に初めて著書にまとめている。彼はヴィトゥス・ベーリングと共に現在はベーリング海と呼ばれているカムチャッカ半島近辺の海域を捜索中にこの鳥を発見した。その頃はまだメガネウたちはベーリング海に面した岩場の海岸に多く生息していた。しかし、そこでは繁殖はせず、繁殖期になると少し離れた小島に渡って命を育んでいた。これは陸地に生息する、当時唯一の天敵であったホッキョクギツネから逃れるためだったと考えられている。

17世紀に描かれたメガネウ 切手にデザインされたメガネウ

17世紀に描かれたメガネウ
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切手にデザインされたメガネウ
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この大きなウの生物学的な情報は全くと言ってよいほど残されていない。シュテラーはこの鳥を「大きく、ドジで、ほとんど飛べない」と記述している。しかし全く飛べないガラパゴスコバネウとは違い、メガネウは身体的に飛べなかったのではなく、飛ぶことを好まなかったと考えられている。この間の抜けた歩き方と人間に対する無防備さが絶滅の主な原因だったのかもしれない。このおっとりとした性格が、メガネウを食料にしようと考えた捕鯨船員や猟師たちの格好な獲物となった。シュテラーも「メガネウが1羽あれば餓死寸前の男の胃袋を3人分満たすのに十分である」としている。ほとんどのウはお世辞にも美味いものではないというのが通念だがメガネウだけは例外だったようで「特に1羽丸ごとを土と石とで包み焼きにするカムチャッカ原住民の調理法で食べるととても美味である」とも書いている。このように“効率のよい”食料であったメガネウは、当時莫大な利益をもたらしていたクジラ漁と、高価な毛皮を持つホッキョクギツネの狩猟が盛んになるのに比例して、その数を急激に減少させていった。

コビトウ ケープライオンの剥製

コビトウ
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ガラパゴスコバネウ
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メガネウは19世紀中期まで生き残った。1882年、アメリカ合衆国立博物館(現・スミソニアン博物館)館長のレオンハルト・シュタイナーが、メガネウたちが生息しているはずの地域を訪問したが、その時点でももう既に30年間も姿を見せていなかった。原住民の人々によれば、最後の数羽がベーリング海の北西に位置するアリー岩島と呼ばれる小さな島に生息していたはずだということだった。メガネウの絶滅は1850年に発表されている。

現代にまで保存されているメガネウの個体はとても少ない。更にこの珍鳥を保存するにあたり、当時アラスカ区長だったクプリアノフがメガネウに興味を持たなければ一体も残されなった可能性すらあった。現存する7体を、各地の博物館に売ったり寄付したりしたのはクプリアノフその人である。2体はイギリスのトリング自然史博物館、残りはサンクトペテルブルグ(露)、ドレスデン(独)、ヘルシンキ(芬)、そしてライデン自然史博物館(蘭)にそれぞれ1体づつが保管されている。ライデン自然史博物館にある個体は元々サンクトペテルブルグが所有していたものだが、その後ライデン自然史博物館に寄付された。

メガネウの放飼場風景

メガネウの放飼場風景
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我がLOST ZOOではこのとても魅力的なウを飼育することをとても誇りに、そして実に嬉しく思っている。当園での繁殖プログラムによって、まだまだ多くの学者が抱えているメガネウにおける謎の多くについて、新たな知見を得ることができるようになるだろうと期待するものである。

LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ

メガネウ
  • 太平洋極北部、ベーリング諸島の中でも特に北西に位置するアリー岩島に分布していた
  • 体長:約81cmうち22.9cmの長い尾を含む 翼長35.6cm クチバシ10.2cm
  • 体重:6.3㎏
  • 巣:本種については詳しいことは判っていないが、恐らく多種のウと同様にコロニーを作っていたであろうことが推測される
  • 生息環境:北太平洋のアリューシャン列島における岩場の海岸地帯 潜水が得意で魚を上手に捕獲していた
  • 絶滅:1741年時点で初めて本種に関する記述が見られた頃はまだごく一般的に見られていたが、1826年頃には乱獲された記録があり、1850年には絶滅した
展示どうぶつ
メガネウ