今回我が LOST ZOO にやってきたのは、地球上で発見された最も印象的などうぶつの一種であり、南米最大の陸生哺乳類で地上性のオオナマケモノ、その名はメガテリウム(“ 巨大獣 ” の意味)。分類上同じ仲間とされているアルマジロやアリクイ、樹上性の現生ナマケモノのように、メガテリウムは主に南米大陸に生息する。最も大きな地上性のナマケモノはメガテリウム属かエレモテリウム属に分類され、体重は 4 - 6 トンで雄のアフリカゾウと同等である。
メガテリウムはパンパス地方やアンデス山脈の標高4500m ほどの高地に生息する一方、エレモテリウムは熱帯の低地を好む。エレモテリウムは巨大な地上性のナマケモノとして唯一、当時できたパナマ地峡を通って 2200 万年前に北米へも進出した。
片足が 88 x 48cm もある足跡の化石から、オオナマケモノは元来四足歩行にも関わらず、クマのように後ろ脚で二足歩行できたことも明確である。後ろ脚で立つと背の高さは 5m 以上になり、それはゾウよりも高く、最も背の高いどうぶつである雄キリンと同じくらいになる。また、メガテリウムは現生のアリクイのようにナックル・ウォークだったと考えられる。巨大な鉤爪があり足を真っ直ぐ地面につけることができないためである。
地上生のオオナマケモノたちの体は長くて硬い、暗褐色または黄色っぽい毛で覆われている。もともと分厚い皮は皮骨板(小さな丸い骨)からできており、そのために特別厚い皮となって肉食動物や敵から身を護ることができた。太い骨とさらに太い関節のおかげで脚や尾も強靭で、その大きさは無論のこと恐ろしい鉤爪を兼備していたため防御の面から言えば、これを捕食しようという者にとっては非常に手ごわい相手だったと言えるだろう。
メガテリウムの皮と歯の標本(画像をクリックで拡大表示)
とりもなおさずメガテリウムの骨格は頑強であり、尾も太く非常にたくましかった。その大きな尾のおかげで他の草食動物が届かない高さにある餌を食べることができた。強い後ろ脚に尾を足した三本脚立ちをしていたということである。メガテリウムは巨大な体を支えながら長い前脚の鋭く曲がった鉤爪を使って枝を引っ張り、好みの葉を選びながら採食していた。大きいながらも少し細長くできた口元は、ものを掴むことができ葉を枝から掴み引きちぎり食べていた。また、口に入れた食べ物をすり潰すために臼歯のみが発達していたようである。
メガテリウムと現生ナマケモノたち、からだの大きさ比較(画像をクリックで拡大表示).
約 3 万年前、最初の人類がアメリカ大陸を占拠し始めた頃には、これらの地上生オオナマケモノはまだ南米大陸の各地でよく見られた。その後エレモテリウムが 12500 年前に北米で絶滅し、メガテリウムは約 10500 年前まで南米で多く見られたが、徐々にその数を減らし約。8000 年前になるとアルゼンチンのごく僅かな場所で生息するのみとなる。彼らを絶滅へと導いた大きな要因は人間の狩猟によるものと推定される不器用で動きが機敏ではなかったため、おそらく人間たちがそれを捕食することはそう難しくなかったであろう。長くて硬い毛と、骨化した皮膚の。ため、槍などの飛び道具でダメージを与えることは難しかったと想像するカリブ諸島のキューバやイスパニョーラ島に生息した小型のナマケモノの仲間たちも 1550 年頃、ヨーロッパから人間たちが入植して間もなく絶滅している。
人間によって絶滅に追いやられたメガテリウムは、永きにわたってアメリカの先住民族ネイティブ・アメリカンたちの伝承説話の中だけで生き残ってきた。彼らの先祖が矢で倒すことができなかったという伝説の巨大な化物 “ マピングアリ ” のモデルとして、である。そんなメガテリウムの生きた姿を我が LOST ZOO でご覧いただくことができる光栄に浴したい。また当園のメガテリウムは妊娠した状態でやってきたため、来園者の皆さんにはまさに今、母親の背にくっついて行動を共にする幼獣がご覧い。ただけるということは特筆に値するだろう。お楽しみあれ。
LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ