ニホンオオカミ(ホンシュウオオカミ)Japanese or Honshu wolf

1905年絶滅
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時に嫌われ時に愛され、そして絶滅に追いやられた「ニホンオオカミ」

日本の地に生息するシベリアから渡ってきたと考えられるほとんどの野生どうぶつたちと同様に、二ホンオオカミもシベリアオオカミが先祖だと考えられている。北海道に現れ、南へと移動した。

エゾオオカミの剥製(北海道大学植物園・博物館 所蔵)

エゾオオカミの剥製(北海道大学植物園・博物館 所蔵) (画像をクリックで拡大表示)

日本列島においては進化の過程で多々見られる例だが、孤立した二ホンオオカミはそれぞれに独自の進化を遂げ、北海道ではエゾオオカミ(ホッカイドウオオカミ)、本州ではホンシュウオオカミとなった。エゾオオカミはホンシュウオオカミと違い従来のオオカミらしい特徴を持つ。ホンシュウオオカミよりは体が大きく、シベリアオオカミに形も毛色も近い。頭蓋骨も大きく、犬歯は曲がって長い。エゾオオカミは灰色で、ホンシュウオオカミよりはるかに大きい。生息範囲についても北海道からサハリン、千鳥列島、カムチャッカ半島までと幅広い。対して、ホンシュウオオカミは本州から四国、九州までである。ホンシュウオオカミは世界一小さなオオカミの野生亜種だった。体長は約90cmで、体高は30cm程度だった。外見はシベリアオオカミよりも犬やジャッカルに近い。脚が短いだけでなく、毛並みは短く硬い、尾は犬のように先が丸まっている。山岳地に暮らすホンシュウオオカミは主に小さな哺乳類を捕食し、時に猿も捕食した。対して、体の大きなエゾオオカミはその地に生息するエゾシカを捕食した。エゾオオカミは19世紀の明治維新に北海道の農家が馬や牛の生産の欧米化に伴い数が減少をはじめた。家畜と競争してしまうエゾシカの乱獲や、放牧地の確保のための森林伐採が進んだ。これにより、エゾオオカミの生息地と従来の餌が激減し、かわりに農地が広がり家畜が導入された。また、エゾオオカミは大陸のものと違い海に囲まれているためハンターたちからどこまでも逃れることは難しく、同時に自分たちの餌となる生き物を探しに遠くまで移動したりすることができなかった。さらに1878年から1879年の厳しい冬で野生における草食のどうぶつたちが激減。その結果、ますます人間によって飼育されていた家畜たちを餌として狙う必要が出てきた。そうして家畜を捕食するようになったオオカミは、人間にとって脅威となってしまったのである。農家はオオカミを集中的に狩り始め、アメリカ式のストソキニーネによる毒殺でオオカミの数を減少させた。そこからたったの10年ののち1889年にはエゾオオカミが絶滅してしまったことは当然とは言えあまりにも不幸な結果である。

ニホンオオカミの骨格標本 ニホンオオカミの剥製(ライデン博物館所蔵)

ニホンオオカミの骨格標本
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ニホンオオカミの剥製(ライデン博物館所蔵) (画像をクリックで拡大表示)

ニホンオオカミの剥製(東京大学大学院農学生命科学研究科) ニホンオオカミの剥製(東京大学大学院農学生命科学研究科)

東京大学大学院農学生命科学研究科
森林科学専攻
森林動物学研究室 所蔵 (画像をクリックで拡大表示)

1881年に描かれたニホンオオカミ ニホンオオカミの切手(日本)

1881年に描かれたニホンオオカミ
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ニホンオオカミの切手(日本) (画像をクリックで拡大表示)

様々な民話や伝承に登場したニホンオオカミ

様々な民話や伝承に登場したニホンオオカミ (画像をクリックで拡大表示)

現在では、北海道大学植物園で唯一のエゾオオカミのペアの剥製を見ることができる。1881年に6月豊平区でメスが捕獲され、1879年8月白石区でオスが捕獲された。どちらも絶滅寸前に発見された、数少ない剥製である。一方、ホンシュウオオカミは19世紀に人間による大量捕獲が原因で絶滅した。1732年に狂犬病が日本に渡り、19世紀には二ホンオオカミの間で大流行した。おそらく、周辺の犬から感染したと考えられている。しかし、実はこれは二ホンオオカミを駆除していた人間にとっては逆に好都合だった。1905年には最後の野生のホンシュウオオカミは奈良の東吉野村で捕獲された。死体はアメリカ人を介してロンドン自然史博物館に売却された。最後のホンシュウオオカミは1881年に岩手県から東京の動物園が買い取ったが、1892年6月24日に飼育下にて死亡した。このオオカミの剥製は東京大学農学部に保管されている。現存する剥製はそれを含め、世界中に5体のみである。

ニホンオオカミを祀る三峯神社の狛犬 ニホンオオカミを祀る三峯神社の狛犬

ニホンオオカミを祀る三峯神社の狛犬 (画像をクリックで拡大表示)

三峯神社に残されているニホンオオカミ図画

三峯神社に残されているニホンオオカミ図画 (画像をクリックで拡大表示)

海外では人間の生活や、人間自身に害を及ぼす存在として描かれることも多い一方で、日本人はオオカミのやさしさや守護的な存在感を強調する。例えば日本の神話やおとぎ話ではオオカミは情に厚く、守護的な存在・役回りにあることが多い。迷った人間を家に導いたりする話もあるし、ローマの建国神話「ロームルスとレムス」の話のように孤児を育てたりする。そのため、今でも山奥の村にすむ人々にとってはいまだに大切な存在として扱われていると聞いても不思議ではない。1905年に死んだ最後の二ホンオオカミを祭った埼玉県の三峯神社では今でも例祭が毎年行われる。この地域の人々にとっては人間とオオカミの間の関係は、人間と自然界との関係の縮図のようなものとして考えられている。我がLOSTZOOでは日本の神話と文化とも深く関係する、二ホンオオカミの二つの亜種、エゾオオカミとホンシュウオオカミの両種を飼育しているのである。

LOST ZOOニホンオオカミの放飼場風景 LOST ZOOエゾオオカミの放飼場風景

LOST ZOOニホンオオカミの放飼場風景
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LOST ZOOエゾオオカミの放飼場風景(画像をクリックで拡大表示)

LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ

ニホンオオカミ