ジャマイカニシキオオツバメガJamaican sunset butterfly

1894-1895年絶滅
  • ジャマイカニシキオオツバメガ
  • ジャマイカニシキオオツバメガ

ジャマイカニシキオオツバメガ 昆虫館“Lost Insect Planet”がニューオープンします!

我がLOST ZOOは開園当初から数多くの絶滅どうぶつたちを導入・飼育してきた。その多くは500年前までに絶滅した270種以上の哺乳類または鳥類である。しかし実際は、西暦1500年以降に784種のどうぶつたちが絶滅したとされ、おそらくは更にもっと多くのどうぶつたちが誰にも気づかれないまま姿を消したはずだ。そのほとんどは昆虫や貝類などの、背骨を持たない「無脊椎動物」なのである。なぜならば、無脊椎動物は特有の微小 な生息環境でのみ生き残ることができる非常に脆弱な生き物であるからだ。彼らよりも大 型の動物ならば受容れられる環境条件であっても、無脊椎動物たちが受容できる微小な生息環境はすでに破壊されている場合もある。科学者らは今後30年の間に現存する種の約20%が、気候変化が原因で絶滅するだろうと予測している。美しいチョウ、カブトムシや カタツムリも例外ではない。

ジャマイカの熱帯雨林

ジャマイカの熱帯雨林 (画像をクリックで拡大表示)

我がLOST ZOOで哺乳類と鳥類以外に、絶滅した無脊椎動物の飼育を望むならば彼らが必要とする特有の生息環境を整えることが不可欠である。一部の種は特別な植物のみを餌とするため、食物連鎖全体の関係性を丸ごと整えることも時には必要となる。すなわち空調が管理された温室で、自然生息地に自生する植物とともに飼 育されなければならないというわけである。我がLOST ZOOにもついにそのような施設が 整えられた。「Lost Insect Planet(失われた昆虫たちの楽園)」———巨大なガラス張りのドームでは、Snout butterflyの名前の通り「突き出た鼻」のような分厚い唇弁が特徴的な モーリシャステングチョウ( Libythea cinyras )などが飼育されている。

ジャマイカニシキオオツバメガ(上)と、 オオナンベイツバメガ(下) 幼虫が餌として好む植物、セイヨウハシバミの一種

ジャマイカニシキオオツバメガ(上)と、 オオナンベイツバメガ(下)
(画像をクリックで拡大表示)

幼虫が餌として好む植物、セイヨウハシバミの一種
(画像をクリックで拡大表示)

しかし、様々なチョウが自由に飛び舞うこのホールの目玉は、何と言ってもジャマイカニシキオオツバメガ ( Urania sloanu )の大群だろう。一見、このカラフルなチョウはアゲハチョウを彷彿とさせ、 実際当初はアゲハチョウの仲間であると記述されていたが実は夜行性の生活リズムを持つ 種に分類される。自然界では、ジャマイカニシキオオツバメガの大群は4月から6月に見られたようだ。日の出前から午前9時までの早朝にアボカドの花にやってきて蜜を吸い、暑い日中はハチの群れのように木の枝にとまって群れで休み、そして午後スコールが上がると再び花にやってくる。

ジャマイカニシキオオツバメガの博物画

ジャマイカニシキオオツバメガの博物画
(画像をクリックで拡大表示)

ほとんどが焦げ茶色の地味な夜行性の蛾と違い、ジャマイカニ シキオオツバメガは鮮やかで派手な彩色が最大の特徴であり、英名の“Sunset Butterfly”と いうのはまさにそこから名付けられている。ちなみに本種は毒性があり、鮮やかな色は「私を食べると毒に侵されるぞ!」という捕食者への警告に他ならない。前翅は漆黒をベース に、玉虫色に変化する銅赤・青・金緑色の模様があり、燕尾形の後翅も黒をベースに翡翠色の斑紋がある。翅の内側のデザインは表側とよく似ているが、緑色の斑紋が薄い。前翅 と後翅はともにやや細長く、開長は64から76mmに達する。

マダガスカルニシキオオツバメガ(裏表)

マダガスカルニシキオオツバメガ(裏表) (画像をクリックで拡大表示)

ジャマイカの熱帯雨林

ジャマイカニシキオオツバメガ♀の標本(裏表)
@デンバー自然科学博物館 (画像をクリックで拡大表示)

ジャマイカニシキオオツバメガの幼虫は黒い体色をしており、2本の不規則な青白い太い縞があり、そこにいくつもの線が交差している。黒い腹部の表面の両端には太い黄白色の縞があり、そこから黄褐色の脚と白い腹脚が出ている。各部位には渦巻き状の長細い毛があり、その毛も白黒の 縞模様である。幼虫の体長は約4-5cm、太さは65mm径で、ヘーゼルナッツの一種 であるセイヨウハシバミ( Omphalea triandra)のみを餌とする。食欲旺盛な幼虫たち がたくさん集まり葉っぱや実が食べ尽くされ、茎だけにされた状態もよく見られたよう である。

LOST ZOOジャマイカニシキオオツバメガの放飼場風景

LOST ZOOジャマイカニシキオオツバメガの放飼場風景
(画像をクリックで拡大表示)

19世紀の終わりには海岸沿いにあった彼らの生息地、セイヨウハシバミの森 林が破壊されたことによってジャマイカニシキオオツバメガは絶滅した。「Lost Insect Planet」では当然のことながら本種の繁殖を見据えて、温室内に幼虫のための特別な餌 としてセイヨウハシバミの森を再現した。現在そこですくすくと育つ幼虫たちを観察し ていただくことができる。我がLOST ZOOで飼育されるジャマイカニシキオオツバメガ たちが次の世代へと繋がってゆくことを誇らしく思うものである。

LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ

ジャマイカニシキオオツバメガ
  • 色鮮やかなジャマイカニシキオオツバメガはジャマイカの海岸沿いの低地にある熱帯雨林に生息する。彼らは早朝と夕方近くに活動し、大群でアボカドやセイヨウハシバミの花にやってくる。それらは毒性な木であるが、その低木(Omphalea triandra)の葉がこのチョウの毛長の幼虫にとって唯一あるいは主な餌であり、幼虫の数が激増するとその地域の木の葉は落葉する。
    19世紀の終わりに、ジャマイカの低地にある熱帯雨林が伐採され農地に変換されたために生息地が破壊され、ジャマイカニシキオオツバメガは絶滅に追いやられた。
  • 大きさ:64-76 mm
  • 生態:ジャマイカニシキオオツバメガは夜行性の蛾のグループに属するが昼行性で、鮮やかな派手な色は日中の活動を知らせるだけでなく、毒性であることを捕食者に警告している。
  • 生息地:主にジャマイカの海岸沿いにある低地の熱帯雨林。幼虫にとって主な、または唯一の餌であるセイヨウハシバミの低木と結びついた場所に生息する。
  • 絶滅:1894-95年に絶滅した。低地にある熱帯雨林が伐採され農地に変換されたため、幼虫の餌の木がなくなったことが原因。
展示どうぶつ
ジャマイカニシキオオツバメガ