ケープライオンCape lion

1858年絶滅
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哀しき”ライオンキング”
-南アフリカから姿を消したケープライオン-

ライオン(Panthera leo)はトラに次いで二番目に大きなネコ科どうぶつである。野生のライオンはサハラ以南のアフリカと、インドにも亜種が現存しているが、かつてはアフリカの北部や南部、アジアの南西にも存在していた。現在ではライオンは絶滅危急種に分類されていて、実際20世紀後半たったの20年ほどの間に30-50%程度へと急激にその個体数が減少したものである。
アフリカ最北に生息していたバーバリーライオン(Panthera leo leo)は野生下では絶滅しているが、今なお動物園で生存している個体がいるようである。しかし、一方でアフリカ最南部にに生息していたケープライオン(Panthera leo melanochaitus) は野生下飼育下ともに完全に絶滅してしまったと言って良さそうである。ロシア・ノヴォシビルスク動物園にいるたてがみが長く大きな体のケープライオンは純血種ではなくケープライオンとそれ以外のライオンとの混血であろう。(彼らがどう主張しているかはさておき。)

ノヴォシビルスク動物園で飼育されているライオン

ノヴォシビルスク動物園で飼育されているライオン
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ケープライオンはサハラ以南のライオンの中で最大種だったとされている。オスの成体は体重230kg、体長300cm、体高106cmにもなったとされている。このライオンは体の大きさだけでなく、長く密度の濃いタテガミも重要な特徴だ。このタテガミ、顔の周りは他のライオンたちと同様の茶色だったが、それ以外の部分では黒い色をしていて、腹面まで黒く長いたてがみがつながっている。このタテガミの色から、クロタテガミライオンという異名もある。ちなみにタテガミだけでなく、耳の先も黒い。

ケープライオンは、レイヨウ類、シマウマ、キリン、バッファローなどの大型の有蹄動物を好んで捕食した。もちろん簡単に捕まえられる家畜であるロバやウシも襲っただろう。

ケープライオンの剥製 レンブラントの描いたケープライオン

ケープライオンの剥製
ウィルトシャー博物館所蔵
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レンブラントの描いたケープライオン
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ケープライオンは喜望峰の海岸に沿って生息していた。ケープライオン以外にも南アフリカには他種のライオンが生息していたため、当時の正確な数と生息領域は分かっていない。しかし、ケープタウンを中心としたケープ州が本種の生息拠点だったことは確かである。当時の記録によれば、ケープライオンは17世紀まではケープタウン周辺で多く見かけられたようだが、18世紀に入るとその姿を見つけられないということはないまでも、個体数は既に減少傾向にあった。イギリスによる植民地化が1795年に始まって以来19世紀まではケープタウンから少し離れたカルーやオイテンハーヘといった地域でも見られていたようである。その後、ケープライオンの数は低下し、ついには絶滅した。ケープライオンはヨーロッパ人が移住してきてから数をあまりにも急激に低下させているため、生活環境の変化自体が絶滅の主な要因だとは考えづらい。新しい文明の侵略により、ケープライオンが捕食していた原生どうぶつたちが追いやられ、そこへ人間の手で家畜というどうぶつがが導入された。ライオンにとっては家畜を襲う以外に生き延びる術はなかったわけだが、そこをオランダとイギリスからやってきた人間たち、つまりは猟師・ハンターたちによって獲りつくされたと考えるのが自然である。最初にイギリス人が入植してきてからたったの数十年で10000頭いたケープライオンの数は僅か100頭にまで減少した。ケープライオンが絶滅した年は正確にはわかってはいないが、ケープ州での最後の野生個体は1858年に射殺されたという記録がある。飼育下ではパリのメナジュリー動物園の1860年に死亡したオスのケープライオンが最後だとされている。

パリのメナジュリー動物園で飼育されたケープライオン ケープライオンの剥製

パリのメナジュリー動物園で飼育されたケープライオン
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メナジュリー動物園の個体は剥製となってパリの自然史博物館に収蔵された
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ケープライオンは生物学者が深く研究を重ねる前にアフリカ南部から姿を消してしまった。世界中の自然史博物館でも剥製はオス5頭がライデン(蘭)、ロンドン(英)、パリ(仏)、シュトゥットガルト(独)、ヴィースバーデン(独)にあり、メス2頭がシュトゥットガルト、ヴィースバーデンにあるのみである。更に、ポートエリザベス(南ア)とコペンハーゲン(丁)の自然史博物館にそれぞれ3-4点の頭骨標本が保管されている。
形態的な分類ではケープライオンはアフリカライオンの亜種とされている。しかし、近代では遺伝的なもの以外にも、気温などの環境要素がライオンのタテガミの色と密度の濃さに影響を及ぼすことが分かっている。基本的には外気が冷たい環境ではライオンのタテガミは長く密になる。北欧やロシアの動物園で飼育されているライオンがこれのよい例だ。その意味では本種が亜種だったことを証明するには更なる研究が必要だと言えよう。近年のDNA研究だけでは、亜種としての特異性を示していない。もしかしたら、ケープライオンはトランスヴァールライオン(Panthera leo krugeri) のうち、最南で生活していた個体群だったという可能性もあり得るだろう。しかし、ケープライオンの頭骨をその他のサハラ以南のライオンのものと比べると確実に違いが存在することも確かである。いづれにせよ更なる研究の成果を待ちたいものである。

ノヴォシビルスク動物園で飼育されているライオン

ケープライオンの放飼場風景
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我がLOSTZOOにて、実に155年ぶりにこの最南方亜種のアフリカライオンを飼育できることを誇りに思う。園内のアフリカエリアにて、あの逞しい肉体と立派なタテガミをたくわえたケープライオンを、来園者の皆様が見逃すことはよもやなかろうと信じるものである。

LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ

ケープライオン